<364校 野球練習後に講習会>

 

首都ハラレから車で2時間の村にあるアラスカ高校で生徒達が野球に興じていた。約60人。半数は女子で、選手の多くは裸足でやっている。練習が終わると木陰でエイズの講習会。「セックスや血液感染以外の感染経路は?」とコーチが問いかける。「注射針」と生徒たち。予防法を聞かれて「コンドームを使うこと」と男子生徒が答えると、「そうだね。ただし、使う場面に出合うのはもう少し大人になってからだ」とコーチは笑った。

 シンバブエ野球協会によると、競技人口は約1万4千人。日本のボランティアを通じて広がり、今では364の高校がチームを持つ。野球はルールが複雑なので選手たちはじっくりと説明に耳を傾ける習慣が身についている。エイズの知識を届けたい10代後半の女子選手も多い。こうした野球の特性を生かし同校は練習に合わせて年に数回講習会を開く。「信頼するコーチが説明すると説得力が増す。それにグラウンドではリラックスした雰囲気で議論ができる」とマシャンバ校長(63)は話す。

 練習に伴うエイズ講習会は、チームを持つ全ての高校で開かれている。学校側が野球協会と協定を結んでいるからだ。野球コーチ育成コースには、エイズ教育プログラムが盛り込まれている。同協会のマンディショナ・ムタサ会長(40)は「ジンバブエではエイズについて学校の先生が教えづらい雰囲気があるので、講習会の開催を野球教室や道具提供の条件にしている。社会貢献をアピールすることで、競技の普及にもつながる」と言う。