おもひでぽろぽろ

 村井洋介

 

  英国に来て1年半が過ぎました。ここ最近はアフリカに行く機会がなかった為かアフリカが妙に懐かしく思えてしまいましたので、今回は18年間過ごしたアフリカで個人的に特別に感動した思い出について書かせて頂きます。

 

ジンバブエにて

 アフリカ大陸で4番目の大河であるザンベジ河は、アンゴラに水源を発し、ナミビア、ボツワナ、ジンバブエ、ザンビア、モザンビークを横切りインド洋に流れ込んでいます。途中には世界三大瀑布のビクトリア滝があり滝からモザンビークまではジンバブエとザンビアの国境になっています。

 そのザンベジ河のほぼ中間の渓谷に1963年に作られたダムによってジンバブエとザンビアの2カ国に跨る長さ220km、幅40kmの巨大人造湖「カリバ湖」があります。(因みに湖の面積は琵琶湖の約8倍)そのカリバ湖の自然環境は素晴らしく国立公園に指定され観光地となっています。

 2002年にそのカリバ湖へ出掛けた時の話ですが、2日間クルーザーに寝泊りしてゲーム(サファリ)をしました。昼間は強烈な太陽の下でのボートサファリや釣りを楽しみ、そして夕方になると湖に沈むアフリカの大きな夕陽を眺めながら大自然と湖に囲まれた船上でのディナーです・・・が実は圧巻なのは夜でした。

 クルーザーは乗船したハーバーには戻らず、そのまま大自然の湖畔に停泊するのですが、夜になると自然界の様々な音が聞こえてきます。船底を叩く水の音、虫の声、カバの鳴き声、野生動物の唸り、梟(ふくろう)。私は怖いもの見たさで船内の部屋からデッキへ出たのですが、空と湖の境が区別できないほどの闇には信じられないほどの数の星、天の川はあまりの星の数に空が白く濁ったようになっていました。そしてその満天の星は天にだけではなく穏やかなカリバ湖の水面に反射して天と湖面に星が光り輝く荘厳な光景となっていました。

アフリカでは何度も素晴らしい星空を観ましたが、これは本当に特別な光景でした。

 

タンザニアにて

 2006年、インド洋の東アフリカ沿岸に浮かぶ島、通称ザンジバル島を訪問しました。元々は中東のオマーンから分離したスルタンの治める独立国家でしたが、現在はアフリカ本土側の旧タンガニーカと合併しタンザニア連合共和国になります。主島であるウングジャ島には首都ザンジバルシティがあり、その旧市街地はストーン・タウンと呼ばれるスルタン統治時代の石造アラブ建築の町並みを残し世界遺産に登録されています。

  正直なところザンジバルでの感動はその世界遺産で観光名所であるストーン・タウンやスルタンの宮殿ではなく、島から外洋のインド洋に釣りに出掛けた時の光景でした。エメラルドグリーンに輝くインド洋の沖にモーターボートを進めたのですが、暫く進んだところで出遭ったのは何百、いや何千という見渡す限りのイルカの群れでした。5-6頭のイルカというならばよくある光景なのでしょうが、360度見渡す限りイルカというのは本当に凄い眺めで、私は釣りなどもうどうでもよくなってそこにボートを停めて1時間以上もイルカの群れの中で彼らを眺めていました。因みにボートを操縦してくれた現地人のおにいちゃんはつまらなそうでしたが・・・

 

マダガスカルにて

 これは出張でマダガスカルを訪れた時の話です。実は未開発の鉱山を見に行くということになったのですが、その未開発鉱区というのが未開の地にあるため「見に行く」と言っても飛行機から見下ろすということでした。ちょっと大型のセスナ機をチャーターして見に行くのだろうと首都アンタナナリボ空港に行くと、我々を待っていたのは、1946年製の複葉機でした。しかもその翼は布張りです。飛行機好きの私は興奮しました。

 早速乗り込みプロペラをスタート、オイルの臭いがする黒い煙が機内に流れ込み、飛行機は短い滑走でふわりと浮き上がりました。

 眼下の景色はジェット機のそれとは違い低くゆっくり流れます。つまり、たいした高さを飛んでいないようで、途中雨が降っているとその雨を避けて飛びました。アンタナナリボを出て1時間強、先ずは北部の港町マジャンガに到着。そこからまたソアララという町まで飛ぶとのこと、ソアララは海老の養殖が行われている町で空港があります。といっても未舗装の滑走路が一つ、未開発の鉱山はマジャンガとソアララの途中にありました。マジャンガを飛び立つと下は入江になった河口で、水面にはイルカが見えます。そして海岸に沿って飛ぶのですが、飛んでいる下は見事なジャングル。布製の翼を持つ複葉機でアフリカのジャングルの上を低空で飛ぶ・・・まさにインディージョーンズの世界でした。

 

ケニアにて

 ケニア在住の獣医、神戸俊平先生を訪ねたときの事です。先生はマサイ族の牛をツエツエ蝿から守るという活動もされているということで、マサイ族の村に行くことになりました。ナイロビから西へ、グレートリフトバレー(アフリカ大地溝帯)へ下り、目的地である「マジモト」を目指しました。スワヒリ語の“マジモト”とは“熱い水”の意味。そうです、温泉村なのです。私はそこで温泉に入るマサイ族を見たのです。

とはいっても日本の温泉風呂に入っているような様子ではありません。幅2m程の小さな川に入って遊んでいるように見受けられました。

 

皆さんも是非アフリカへどうぞ!