アフリカを思う

村井洋介

 

 21世紀突入から15年目に入り、資源開発が引き金となったアフリカの発展は物凄いスピードで進んでいます。世界はいよいよアフリカの時代が到来すると確信し、アフリカへの投資が急増、そしてそれはBOP層(一人当たり年間所得が2002年購買力平価で3,000ドル以下の階層で、全世界人口の約7割、約40億人が属するとされる)の生活水準を上げ、中所得者層を劇的に増やしています。

 メディアの取材に対して「国は豊かになったが、庶民の生活水準は悪くなった」という現地の人が沢山いますが、私が見た限りでは生活水準が悪くなったのではなくて、庶民の生活に対する水準の基準が物凄く高くなっていると思うのです。

 例えば、私がジンバブエに赴任した23年前は、ハイデンシティーエリアと呼ばれる黒人居住区ではまともなテレビがある家は少なく、電話すら無い家の方が多かったのですが、今そのエリアには衛星放送受信アンテナがほとんどの家に設置されており、携帯電話を持っていない人の方が少ないのです。

 90年代の初めは“盗まれるから”という理由で、ローカルホテルの部屋にテレビはありませんでした。家庭電話や公衆電話もろくに繋がらないので、確実な連絡手段は手紙でした。(国によっては手紙さえ当てにならない所もありましたが…)

 今、アフリカのホテルの部屋には薄型テレビとWiFiが当たり前にあります。勿論、家庭にもです…僅か20年です。

これはほんの一例で様々な物や環境、そして生活習慣が大きく変化をしています。庶民の生活水準は明らかにもう別次元になっているのです。

そうして凄まじいスピードで変化をするアフリカは当然ながら既に未知の暗黒大陸ではなく、物理的にも世界中とつながり(特に世界中からの航空機の乗り入れは激増しています。)、アフリカの状況はリアルタイムで世界中が知ることができるようになりました。

 そして今年、世界はエボラウイルスに震撼しました。私自身も2〜3年前には結構頻繁に訪れていた国々での出来事で、犠牲者は6500人です。私がアフリカに在住していた頃にも、エボラ出血熱やマールブルグ病といった恐ろしい感染症は何年か周期で起きていましたが、以前はこんなに多くの人達がこんなに短期間で感染して広範囲に蔓延することや、ましてやそれによって世界中が恐怖するといったことはありませんでした。今回の出来事で、発展は利益だけではなく、リスクも共有する事を教えられたと思います。

 ただ相変わらず、良いニュースが報道されることはあまりありませんし、年間に何十万人の死者を出しているマラリアやHIVに関する報道はとても少なく、ひどく偏っていると感じます。

 さて、日本に戻り早1年が過ぎました。戻ってみると日本にとってアフリカはやはり物理的にも情報的にもとても遠いところだと改めて実感しました。

 最近では正直なところ本当に自分があの大陸に居たんだろうか?と思えてしまいます。ですから、今後とも「ジンバブエ野球会」を通じたアフリカとの関わりを大切にしていきたいと思いますので、引き続き宜しくお願い申し上げます。