第8回オールアフリカゲームズ アブジャ・ナイジェリア大会

ジンバブエナショナルチーム監督 村井洋介

 

 

全てをこの試合の為に賭けてきたと言っても過言ではない。

 

オールアフリカゲームズ野球競技、予選ラウンド終了後の決勝トーナメント第1戦、準決勝、対ナイジェリア戦。

 

確かに、予選ラウンドではナイジェリアに10-0のコールド負けをしていたが、目標はこの決勝ラウンド進出後に全て注がれていた。

 

当然ながら、この試合は両チームのエース対決となった。

 

ジンバブエチームの先発はエースのスチワート、1994年のジンバブエ少年野球チームのエースで、私がアフリカで最初に教えた投手。1999年にナショナルチーム入りし、この3年間チーム投手陣の柱となってきた。

 

一方のナイジェリアはサンディー、1995年のオールアフリカゲームズ時に私がナイジェリアコーチを務めた際に17歳の彼を先発投手に抜擢、1996年ナイジェリアでの5週間に及ぶコーチングクリニック時には、全日程を私に同行してもらい、コーチをした投手で、言ってみれば私がアフリカで2番目に教えた投手である。(嬉しい事に彼は今でも私の事をコーチと呼んでくれるばかりか、自分のコーチは私一人だけだと公然と言ってくれていた。)

 

予想通り、序盤、中盤と緊迫した投手戦が続き、3-2の1点差で後半の7回に突入した。

 

ジンバブエの2点は2点をリードされていた3回表にランナーを一人置いて今大会当りの湿っていた1番打者ジョンがセンターへ痛烈なライナー、突っ込んできた中堅手がそれを後ろに逸らしランニングホームランとなった2点。一方ナイジェリアの3点は、2回に2点、3回に1点を加点したものでいずれもエラー(2アウトからのファールフライ落球と悪送球)と審判のジンバブエにとっては不運な判定が大きく絡んだ3点で、両投手ともに打たれて取られたという感は無い得点である。

 

このような崩れがちな序盤のゲーム展開にもかかわらず両投手は中盤をきっちり押さえる立派な投球を見せて試合を組み立てていた。

 

8回裏、スチワートは遂に力尽き、長短打を許し3点を失う。しかしジンバブエチームは最後の最後までナイジェリアを攻めつづけた。

 

6-2、ゲームセット。

 

ナイジェリア選手が歓喜の輪を作ってはしゃいでいる中、サンディーは一人落ち着いた面持ちで一塁側ベンチの前に立っている私に向って挨拶を送ってくれた。

 

ジンバブエチームは若い、試合経験も決して豊富ではない、開催国、敵地での戦いであり気候は想像を絶するほど違っていた。良く戦った。選手たちはこの試合から野球の技術面以外からも多くを学んだはずである。

 

涙に暮れ、肩をアイシングしているスチワート、勝ち投手であるにも関わらず少し申し訳なさそうな顔をしているサンディー。試合の終わったグラウンドには文字には出来ない、言葉には表せない気持ちが私の中にあった。