ジンバブエの野球との出会い

香川大学経済学部4回 山下貴史

 

 みなさま、はじめまして。私は山下貴史と申します。ご縁がありましてここに文章を書けることを大変うれしく思っております。

 私は2015年春にモーリスが来日された際、おかやま山陽高校の堤先生にお電話をいただき、彼をアテンドして広島に行かせていただくというありがたい経験をさせて頂きました。

 まずはそのモーリスと一緒に行った広島の思い出を紹介したいと思います。我々が訪れたのは、広島といっても平和公園と広島城だけです。モーリスは特に平和公園に行きたかったらしく、そこで長い時間を過ごしました。終始、彼は「タッチマイハート」と言っていたのを思い出します。帰り道には広島駅でブレイク前の広島東洋カープの鈴木誠也選手に遭遇したのもいい思い出です。

 私がこうしてモーリスと広島に行き、その後もお世話になっているのは、すべて堤先生を抜いては語れません。私が堤先生と出会ったのも「神ってる」ことだと思います。

 私は奈良県出身で桜井高校という学校で野球をしていました。ポジションは中学時代からずっとブルペン捕手です。最後の夏は現在オリックスの青山投手、中道捕手を擁する智弁学園に負けました。これで真剣に野球をするのは終わりだと思い引退し、大学は香川大学に進学し、野球をするのは草野球の時くらいだけでした。

2014年の春休み、ここを話せば長くなりますので省略しますが、王貞治氏が会長の世界少年野球大会に出場するモザンビーク(ジンバブエの東の国)代表の小学生に野球を教えることになったのです。モザンビーク代表といっても野球をしている子どもなどいない状態です。カウンターパートと、一緒に訪れたアメリカ人と3人でなんとか頑張り、子どもたちが来日できるようになりました。私はその後もモザンビークを訪れましたが、アフリカで野球をしている国はどんな様子なのか興味をもつようになりました。

堤先生との出会いのきっかけとなったのは、愛媛県の西条高校で恐れ多くも授業でモザンビークの話をさせていただいた際に、野球部の監督さんに「アフリカと言えば、堤というおもしろい先生がいる。会うか。」と紹介していただいたことです。すぐに岡山に会いに行きました。

堤先生には隊員時代の話をよく教えていただきました。とくに、少年が「野球がしたい」という一心で作った、サザをつくる棒で作られたバットを見たときは、強烈なインパクトをうけました。堤先生の元へは、3回ほど行かせていただいたと思います。そしてある日、急に電話がなり、その内容がモーリスとの広島行きだったのです。

モーリスが語るジンバブエの野球が見てみたいなと思い、その夏に私はブラワヨのモーリス宅を一週間訪れました。ブラワヨに着くまでが大変で、南アフリカタンボ国際空港に着いた私は高速バスでブラワヨまで行くことにしていました。空港にはモーリスのお兄さんが迎えに来てくださり、パーク駅まで送ってくださいました。そこからの高速バスが刺激的で、乗客はもちろん全員黒人で、深夜急にバスが止まり、発生していた交通事故の人命救助をし始めたのです。さらに国境での手続きは初めての経験。あの移民がたくさん渡った川を越えて、入国審査をクリアしたことは忘れられないです。昼にヨハネスブルクを出たバスは朝にブラワヨに着きました。ジャカランダがきれいに咲く街でモーリスは待っていました。

 滞在中は深夜列車に乗ってビクトリアの滝に連れて行ってもらったり、モーリスが務めている大学の授業を受けさせてもらったりしました。大学は想像以上にきれいでラウンジで出てきた食事も美味しく、バーもあったりして、今の大学から転学したいなと思ったほどです。あとサッカーも観にいきました。モーリスは顔パスで関係者席に入っていってびっくりしました。私は滞在中にお世話になったチキンインのチームを応援しましたが負けてしまいました。

 もちろん野球もしました。朝一番でブラワヨを出てマシンゴで行われていた、モーリス曰くジンバブエの甲子園という大会を観に行きました。そこでの風景は刺激的でした。何より

も選手が楽しそうに野球をしているのが、私の高校時代と正反対で羨ましく感じました。そこでは田澤さんにもお会いできました。一人であの大人数に対してアプローチをされている

のは、すごいなと思いました。

ブラワヨでは教員養成学校のチームに混ぜてもらって野球をしました。最初はセカンドを守りましたが、あまりにもキャッチャーがポロポロするので、途中からキャッチャーをしました。ピッチャーは日本だと中学生くらいでしょうか。100キロくらいの真っすぐとカーブ。夕暮れの凸凹のグランドで勝利を分かち合えたのはいい思い出です。

 私はいま、卒業に向けてジンバブエにおける野球の歴史と現状について調べて卒業論文にまとめています。調べていると本当に感動的で、野球が人と人をつないでいき輪が広がっていく。そしてその輪が広がっていくきっかけとなる青年海外協力隊の方々の活動は素晴らしいなと感じています。私も野球を通じて皆さんにお会いできましたことを本当に嬉しく思っています。ありがとうございます。

素敵な笑顔

元気に駆け寄る


のどかな野球遠景



MLB トライアウト(ジンバブエで)

南ア MLB トライアウト参加 Ashlone Chibvure 君(左)

送った審判用具

2004 年のジンバブエ対関学戦