ジンバブエを思う

村井洋介

 今年は5年に一度開催されるアフリカ開発会議(TICAD:Tokyo International Conference on African Development)の5度目の会議が6月1~3日に横浜で開催され、アフリカからは39名の国家元首・首脳級を含む51ヶ国が参加(89歳のムガベ・ジンバブエ大統領も会議参加の為に来日)、「躍動するアフリカと手を携えて」という基本テーマで今後のアフリカ開発の方向性について議論がなされたようですから、今年はまたしばらくアフリカへの関心も高まり、色々と注目を集めることになりそうで嬉しい限りです。

  21世紀に入り、資源の高騰を背景に、多くのアフリカの国々がその資源開発を軸に経済成長をはじめ(残念ながらジンバブエは資源国であるにも関わらず、流れに逆行してしまいました)、いまやアフリカは援助の対象ではなく、ビジネスの対象になっています。

一方でその経済成長を持続するための今後の課題の一つに、社会基盤を支える現地の人材育成があり、今後の方向性が注目されていますが、これは一朝一夕に出来るものでも、また一様な方法で進められるものでもなく、大変な時間と労力と知恵が必要になると思います。

Bunt Coverage

 

  様々なところで報道されていますので既にご存知とは思いますが、現在アフリカ大陸は1年間に3千万人とも言われる人口増加を続けています。その結果、30年後にはアフリカの人口は現在の約2倍にあたる20億人を突破する勢いです。そうなると当然ながら貧困層の人口も増加する訳ですが、いまやアフリカとはいえ以前に比べ誰もが容易に様々な情報にアクセスできるようになったことで、いわゆる貧困層といわれる階層の親達の多くが子供の教育が階層移動の手段となることを知り、人口は教育に有利な都市部へ流れています。またアフリカの多くの政府も人材育成のため、初等(義務)教育の無料化政策を導入しており、初等教育が急速に普及している一方で、生徒数の増加に対して教員数が追い付かず、教員不足と教育の質の低下が

深刻化、都市部と地方の教育格差、留年や中途退学の増加なども問題化しているようです。

  こうしてみると改めてジンバブエでの野球の普及活動は、アフリカに置いてはとても恵まれた環境であったと思えます。勿論、独立が遅かったということや他国と比べ異部族が少ないということが大きな理由でもありますが、初等、中等教育のシステムが全国的にしっかりと確立されており、教育に対する親の理解があり、就学率も識字率バントシフトへ走るも高い、また都市部と地方の教育レベルにとんでもない格差も無かったので、全国にしっかりと人材基盤が存在していたからです。

  何故今更そう感じるかと言いますと、家内の生まれ故郷であり今世界中から注目を集める国にジンバブエの隣国モザンビークがありますが、この国の場合は、全国的な教育システムが確立されていなかったため、都市部を除いて教育に対する親の理解が薄い、地域間の教育レベル格差が大きい。それに不幸な内戦が続いたことも手伝い、就学率や識字率は非常に低いのです。21世紀に入って国の経済発展と共にようやく義務教育が無料となって初等教育が急速に普及していますが、現在でも識字率はまだ5割強、義務教育(初等教育7年)修了率が4割以下という状況です。

モザンビークはポルトガル語というイメージでしょうが、実際にポルトガル語をちゃんと読み書きできるのは人口の3割程度で、どんな田舎でもとりあえず英語が通じたジンバブエとは大違いなのです。またモザンビークに限らず、アフリカには今も人材という社会基盤の弱い国が実はまだ沢山あります。そのような国で果たしてスポーツの普及が出来たでしょうか?

  今アフリカが未曾有の注目を集めたこと、インターネットの普及で情報の入手が容易になったことで、そういったこれまでは解からなかったアフリカの様々な実情が解かってきただけに、ジンバブエの現況が残念でなりません。1990年代にスポーツの普及が出来たアフリカの国はいったいいくつあったでしょうか?一日も早いジンバブエの復興を願って止みません。