マラウィの向かい風Ⅲ

溝畑智子

 

 日本は、強い寒気に見舞われ、大雪が降っている地域もあるとラジオで聞きましたが、伊藤様はじめ、ジンバブエ野球会の皆様如何お暮らしでしょうか? ここマラウイは、もう雨季突入なのですが…、今年は12月半ばというのに、まだ30℃以上の暑い日が続いています。私は、すっかり真っ黒になり、こちらの人と同化しつつあります?!  去る7月に、神戸で「エイズ国際会議」が開催された事、日本も新たに千人、累計で1万人を超える人がHIV/AIDSに感染している事を知りました。今後、ネズミ算方式に増えていき、とても恐ろしいことですね。

 マラウイでは、人口1100万人のうち、エイズ感染率は14.4%、約90万人が感染しており、内年間死亡者は87万人、毎年新規感染者の約半数は15-24歳の若者とのこと。結核などの日和見感染によって、エイズを発症、進行を早めます。エイズの発症を遅らせる薬もありますが、私が活動しているHealth Centreまではなかなかまわってきません。日常の栄養不足もあり、エイズが発症するとあっという間に亡くなってしまいます。  同期のエイズ対策隊員は、孤児のディケアセンターで活動しています。HIV/AIDSの全国的な蔓延により、孤児が爆発的に増加しており、両親を亡くした子供も多くいます。生活費を稼ぐために、学校を中退する子供も多い状況の中で、子供を学校に連れ戻し、子供らしい生活が送れるように、経済的・精神的に支援を行っています。私も医療隊員の一人として、HIV/AIDSの予防啓発に微力ながら関わっています。乳幼児健診では、低体重が続いている子供に対し栄養指導を行い、また状態があまりよくない場合(貧血や浮腫など)は、病院やVCT(HIV/AIDS任意検査・相談所)に行くようにアドバイスをしています。また、HBC(Home Based Care)のミーティングに参加し、実際にスタッフと患者の家を訪問したりなど行っています。2月には、マラウイでHIV/AIDSの広域研修があり、近隣諸国からエイズ対策隊員達が集まり、勉強会や情報交換など行われ、私も参加する予定です。今後は、中高等学校に行って、HIV/AIDSの予防教育を行いたいと考えているのですが、前回書いたように、相変わらず問題だらけの状態なのでどうなることやら…。

 この国、給料が安く、しかし物価はどんどん上昇しています。スタッフを含めた人々は、お金がもらえないならば余計な事はしたくないと思っています。

また、多くの援助が入っているこの国、“もらって当たり前”とか努力をしないで得られる分、物の価値が理解出来ず大切にしない人が多くいます。その一方で、ある所にはあるのに、私がいる末端まで援助物資が届かないこともしばしば。時には、上級階級の懐に入っていることもあるそうです。このような状況で、いくら援助しても良くならないのではと思う時もあります。人間やっぱり努力して得たものでないと意味がないと痛感し、援助のあり方を考えさせられます。

 今年11月より、Village Health Registerといって、日本の戸籍に当たるようなものが、ユニセフの協力で始まりました。全家族を登録し、子供の体重や予防接種状況、妊産婦、死亡者の把握、また公衆衛生状況(トイレやゴミ捨て場、飲み水の管理等)の調査を行います。この為、以前よりもよく村に行くようになりました。時には、バイクで行けない所もあり、途中からは30分以上も丘を歩いて登った所にある家を訪問したりもします。こういう村に行くと「本当に夢が叶ってアフリカに来てるんだな~」って何だか嬉しくもなります。

 私の場合新規派遣で、2年間という限られた期間では、活動の成果なんて出ないと思うけど、それでも私に出来る範囲で関わり、より多くの人が変な日本人がいたことを覚えてくれていたらそれでいいかなと最近は思っています。

 お陰様でマラリアや腸チフスなど大きな病気もせず、またスリや空き巣など小さな犯罪にも遭わず今まで過ぎました。30前の微妙な歳で将来のことなど色々考えますが、まだまだ自分探しの旅は続きます。残り半年余り、気を緩めずに生活したいと思います。 きっと夏の集いには参加出来ると思います。皆さんに会えるのを楽しみにしています。皆さんもお体大切にお過ごし下さい。来る年もよろしくお願い致します。(05年12月記)