マラウィの向かい風Ⅳ

溝畑智子

 

 Monile Mose! Muli uli? (皆さん、こんにちわ! お元気ですか?)最後に初めてのトゥンブカ語です。

 皆さん、見て来ましたよ!5年振りのVictoria Falls!ハラレ経由だったので、何だか懐かしく、ちょっと得した気分。今回は、ヘリコプターで上空からも堪能しました。雨季の終わりということもあって、すごい水・水・水!水煙で真っ白!カッパと傘を併用してもビッショリになってしまいました。5年前と変わりないザンベジ川、日本では毎日が忙しく自分の夢すらもあきらめかけていた時に、このアフリカで感じた自然の雄大さ、そしてアフリカへもう一度来たいと心に誓った場所だけに、再訪出来てとても嬉しく、またあの時の気持ちを思い出し、残りの任期を後悔しないように最後まで頑張ろうと思えました。

 帰国書類も提出し、残りの任期も1ヶ月を切ってしまいました。正直、まだ日本に帰る実感が全くないのですが…。でも帰国出来る喜びと、マラウイを離れる寂しさとで、今は何だか複雑な気持ちです。

 この2年間、本当に色々な事がありました。初めはなかなかコミュニケーションすら取れず、こんなので活動が出来るのだろうかと本当に心配しました。途中スタッフの移動等で強烈な向かい風を受け、任地変更も考えさせられました。でもお蔭様で、多くのスタッフは私を受け入れてくれて、後半戦は活動も広がり多忙で、体が3つぐらいあったらいいのにと思う毎日です。

学生時代に、テレビのドキュメンタリーを見て、海外ボランティアに憧れ、あれから十数年。実際にアフリカに来て感じたことは、既にたくさんの援助が入っている為に、思った以上に薬や物があるということです。しかし、それらの管理や使用に対する知識が不十分なために、有効に使用されていないことが多々あります。時には本来の使用目的以外に使用し、実際にそれが必要な時には物がないと皆言います。まだ使用出来る物でも、新しい援助が入ると、それを放ってすぐに新しいものを使ってしまいます。他国の援助で得ている物を大切にする人が少ないことには、正直ショックを受けました。

その反面、幾つもの丘を超え、車やバイクでも行けないような山や丘の上にある村に行った時には、正に自分が憧れていたアフリカに触れることが出来てとても感動しました。現地の人ですらほとんど行ったことのない村、当然電気も電話もない、水も何キロも離れた川から汲んで来ています。近くにはHealth CntreどころかHealthスタッフすらいない、そんな村でも、人々は満面の笑顔で迎えてくれます。日本では決して感じることの出来ないこの感動は一生忘れることはないでしょう。

現在、世界中では、環境問題、人口問題、食料問題、貧富の差の増大、HIV/AIDSの蔓延などさまざまな問題がたくさんあります。同じ人間として生まれてきても、生まれ育つ国によって受けられる医療も異なります。日本にいると、あまり実感することのないこれらの問題ですが、ここアフリカに来てさまざまなことを感じ、考えることが出来ました。同様に援助のあり方についても考えさせられました。また、豊かさと幸せは比例しないことも実感しました。

このようなたくさんの貴重な経験を得ることが出来、そして多くの方々に支えられたことに感謝しています。ジ風の皆様にもたくさんの励ましを頂き、お蔭様で今爽やかな風を感じながら、この2年間を終えることが出来そうです。本当に有難うございました。 帰国後は、この2年間で学んだことを基に更に知識を身につけて、本来私がやりたい看護“その人がその人らしく最期まで全う出来るような看護”を求めて、病院という限られた環境でなく、地域社会で働きたいと考えています。 また‘国際協力’ はあまり意識していませんが、このアフリカ・マラウイで感じたこのサバンナの風をいつまでも感じながら、それをより多くの人に伝えていけたらと思っています。もちろん、何らかの形でボランティアには関わっていきたいと考えています。

今回で最後のマラウイの向かい風となりました。

今、この2年間のスピードにすごく驚いています。本来、文才もなく、書くのも苦手で、あれもこれもと思いながら、なかなかうまく伝えることが出来なかったこと、どうかお許し下さい。8月にはツアーに参加された方々が集まられるとのこと、やっと皆さんに会えますね。その時には皆さんとたくさんお話出来ることを楽しみに、帰国するまで気を緩めずに過ごしたいと思います。  (2006年6月)