モリス・バンダ氏 来日

ホストマザーin尼崎  正岡康子

 

 昨年11月ジンバブエ野球協会(以下ZBA)新会長に就任したばかりのモリスが、倉敷市在住の堤夫妻の元へやって来るというので、4月25日夕方、関西国際空港まで伊藤さんと一緒に迎えに行った。新大阪までの電車内で今回の来日目的を尋ねると、「堤さんには本当にお世話になった。自分でお金を貯め来日することによって、立派に成人し仕事についた自分を見せ、ご恩返しができるのではと考えた」と。これを堤夫人に伝えたところ、「あの貧しかったモリスが……」と感極まった様子だった。

 大工をしたこともあるという器用さを発揮し、モリスは堤家の障子の張り替えをしている写真をFacebookに載せた。5月8日からの東京旅行では、ロッテの伊東英治氏(元隊員)をマリンスタジアムで突撃訪問、江頭先生の学生達の案内でスカイツリーに上ったり、浅草の祭りに飛び入りで神輿をかついだりと、充実したジャパニーズライフを楽しんだ後、5月10日ようやく尼崎へやって来た。モリスに会ったら是非直接聞いてみようと思うことが何点かあった。

 まず、マンディのこと;結論から言うと、モリスも他の誰もよくわからない、おそらく南アで家族一緒に暮らしているのだろうということだった。

 次に、モリスが新会長に選ばれたいきさつ;マンディが消息不明になった後、スポーツ・リクレーション省(以下SRC)からの要請で各地域(12地区中、実際に集まったのは6地区)の代表者会議が開かれ、その席上でモリスに白羽の矢が立ち、電話連絡を受けたモリスが承諾した。現在、ブラワヨにある大学で教鞭をとっているモリスに皆が信頼を寄せたのであろう。

  ZBAと(首都の)ハラレ野球協会(HBA)との関係;ZBAが上位組織であるのは当然だが、HBA会長ウィンモア(マンディから野球を教わった)はアメリカ人のブラッチャーコーチと相性が良く、アメリカからの潤沢な資金を盾に独自で活動をしているとのこと。昨年11月の代表者会議にもハラレからの参加はなかった。現在ハラレ在住のJohnが請われてテクニカルコーチとしてHBAで指導しており、現在ジンバブエで活動中の青年海外協力隊野球隊員の田澤さんもHBAの活動に参加している。

 モリスの展望;モリスが我が家に滞在した4日間、ほぼ毎晩伊藤さんに来て頂き、モリスのビジョン等を説明してもらった。彼は、まずドリーム・パークの現状をなんとか改善し、野球専用球場として復活させたい、そのためにジンバブエ野球会からの手紙(野球場を建設した当時の話や大勢の善意の結晶であるあの美しい野球場を復活させたいという要望をまとめたもの。SRCに陳情する際に持参する)を作成してほしいと頼まれた。私の作成した原文にモリスが添削を施し、伊藤さんの署名を入れ、完成当時のドリーム・パークの写真と一昨年の荒れ果てた状態の写真を添付して持ち帰ってもらった。しかし、昨日(6月13日)HBA副会長のイノセントから、残念ながら現在のところその手紙は効力を発揮していない、とのメールをもらった。ハラレ市からの借地権が当初から脆弱だったことと、現在管理しているスポーツクラブの意向が大きな障害になっているようだ。それでも、イノセントもモリスも努力は続ける、と話す。

モリスの大きな夢;2020年東京オリンピックに向け、アフリカ予選に出場できるようなナショナルチームを育てたい。そのために、来年3月約1月間、おかやま山陽高校(堤氏の勤務校)野球部にジンバブエから15名程度の高校生とコーチ1人を野球留学させる。宿泊には野球部の寮を利用し、交通費・滞在費は元隊員が所属しているJMLB3チーム(ロッテ、ソフトバンク、ジャイアンツ)から支援を受けたい。おかやま山陽高校には実業科があるので、野球の練習と共に、何か技術も習得できればジンバブエの子供達にとって大変実りある短期留学となるだろう。この話は堤さんとかなり具体的に進めているようで、活き活きと語っていた。

モリスは、ブラワヨ中心の活動を念頭に置き、ハミルトン高校教諭ワシントン、テクニカルコーチとしてのジョンをZBA中心メンバーにしたいと考えている。5月21日に帰国し10日後の月末にはブラワヨで高校教員対象のコーチ研修会を開催した。残念ながら書類の準備(HBAの要請で働いている田澤さんがブラワヨへ行くには許可が必要)が間に合わず、田澤さんの参加は叶わなかった。ジョン(現在、ジンバブエ・オリンピック委員会?が開講しているスポーツ経営に関する講座に登録し一年間の予定で勉強中。5月末は大切なプレゼンテーションがありハラレを離れることができなかった)も不参加だった。このことが原因の一つとなり、モリスとジョンは目下少し険悪な状態になっている。それぞれに言い分があり、なかなかすんなりとは仲直りできない様子だ。

今後どのような展開になるのか少々心配だが、幸いなことに、ジンバブエとのパイプが少なくとも、モリス、ジョン、ワシントン、イノセント、たまにウィンモアと増え、それぞれの視点からの情報が入手できるようになってきた。Facebook MessengerとWhatsAppというアプリでのやり取りをしている。日本時間では深夜のチャットなので、寝不足にならぬよう、これからも交流を楽しみたいと思っている。ジンバブエに幸多かれと祈って止まない。