ロンドンから

村井洋介

 

 皆様お元気ですか? 英国に移り、ジンバブエから南アフリカに移った際とは大きく違う文化、風習、気候、生活条件に戸惑うばかりの1年が経ちました。

 その1年目の節目であった1月(詳しくは17日)、ロンドンで開催されていた教会関連の会議に出席するために来倫していたカート・ホリディ氏に会うことが出来ました。当然ながらその晩は昨年夏に訪れた日本の話で盛り上がったわけですが、私には彼が「観て」「体験して」「感じた」日本での野球は、“Baseball”という彼の母国であるアメリカで生まれたスポーツが、海を渡った東洋の島国ではその独特の文化と慣習が加えられて「野球」というスポーツになっていたことに驚きながらも、それを素晴らしいと感じたように思いました。

 という訳で、当然話は日本の野球という話題になり、一つの例えとして、話は日本に於けるキリスト教の普及形態に及び、アフリカ等に於いては意外とすんなり形通りに受け入れられたこの宗教が、日本では宣教師たちが伝えたかった形や理念が理解されなかったこと、その背景にある日本の文化、慣習、宗教観、それと似たようなものがBaseballが野球として変化した背景にあるのではないか…今回の日本で体験した野球は…と話はどんどん弾み、あっという間に時間が過ぎていました。

 彼と私の出会いは1999年に南アフリカで開催されたAll Africa Gamesの野球会場でした。Zimbabweチーム、Ghanaチームといった日本人との関わりが深いチームが参加していたこと、私自身もAfrica Baseball & Softball Associationに属していたことから大会を観に行ったのですが、その時にバックネット裏でZimbabweチームの試合をZimbabweの帽子をかぶって応援をしている変わった?白人が彼でした。その後はZimbabweに用事があるときには野球場に顔を見せてくれるようになり、All Africa Gamesナイジェリア大会、私の南ア移転、という過程で彼との交流が深まりました。とにかくBaseballが大好きで、会えば常にBaseballの話でした…相変わらず今もそうですが。

 野球好きの彼は当然?ながら地元テキサス州のHuston Astrosのファンですが、Astrosオンリーの熱狂的なファンというよりもAstrosを中心としたBaseballのファンであり、その範囲はメジャーリーグで活躍する日本人選手や日本のプロ野球にも興味が広がっています。日本のプロ野球に興味を擁いたきっかけは、日本にハムと戦う球団(日本・ハムファイターズ)があったことだったとは本人談。

 しかし、日本のBaseballには常々興味を持っていた彼も、実際にその地に於いて自分の目で見て身体で感じた「野球」は、これまで自分が理解していた日本のBaseballとは違っていたようです。プレーやルールに差はありませんが、特に日本の野球をする環境やそれを支える人々のあり方に感動したようです。その中でも甲子園のアルプススタンドと障害者野球はかなり強烈なインパクトがあったようです。そしてそれを観たことで「野球」に対する日本人の考え方について彼なりに新たな理解が生まれたようでした。引き続き、アフリカ野球を通じて素晴らしい関係でいたいとは彼の要望でしたが、アフリカ限定しないで、活動や利益がアフリカ野球に繋がるものを一緒に考えましょうということで分かれました。

(ちなみに野球以外では日本で観光先の話もしましたが、野球以外で彼の心に強く残っていたのは正岡家の食事でした。)