事務局だより

伊藤益朗

 

●ジンバブエの風は今まで1年に2回発行して来ました。恒例に習えば今年の1月に24号を出すところでしたが、ジンバブエでの支援活動が殆んど無く、また皆様からの会費も23号で告知しました通り、原則として一旦止めさせて頂いておりましたので、発行しませんでした。今回のジンバブエの風24号は、2009年6月から2010年5月までの総まとめとしての発行となります。

 

●ジンバブエに日本人スタッフがいなくなり、協力隊も引き上げ、ジンバブエ国内への送金、国内への野球支援がままならない状況になり、長い月日が流れました。ジンバブエドルが価値を失い、国内でもUSドルか南アランドで賄っている状況です。しかしそのジンバブエの危機が却ってジンバブエに送金を可能にしました。送金したお金をジンバブエドルにすることなく、そのままUSドルで受け取ることが出来るようになったのです。そのため、今年の3月以降、私たちはジンバブエ野球協会会長のマンディ氏に向けて、送金を始めています。野球普及活動や協会運営支援と、日本とのメール連絡が取れるように。しかし過剰にならぬよう注意しながら進めて行っています。しばらくジンバブエ国内に向けての支援は出来ていませんでしたので、私たちもマンディ氏との連絡を密にし、ジンバブエの野球好きの若者達を応援したいと張り切っています。送金は2度にわたって行いました。6万円と5万円を東京にあるブラジルの銀行から送金し、それぞれ、送金手数料を差し引いた588.68US$と499.91US$が満額で届いたという事です。

 

●南アフリカ在住の村井洋介さんは、2009年末に転勤により、イギリスのロンドンに移られました。お仕事は変らずアフリカが対象とのことですので、今後も支援先の提案など、今まで同様にしていただけるとのことで安堵いたしました。また、村井さんのご提案があり、南ア・ヨハネスブルグ在住のアメリカ人宣教師のカート・ホリディ氏にも、今後の支援に関するガイドなどでご協力いただくことに致しました。カート氏は、私が2003年のオールアフリカゲームでナイジェリアに行ったときに、レソトチームのコーチとして来ておられ、お会いしています。

カート・ホリディ氏には、8月上旬頃に来日して頂き、日本の皆さんと顔合わせをし、日本野球の雰囲気などもつかんで頂き、今後の協力関係の糧にして頂くつもりです。その際には、別頁でご案内の通り、夏の集いを8月8日(日)に開き、カート氏にお話をして頂きますので、皆さんご参加ください。カート氏の滞在日程は、8月4日から12日で、詳細未定ながら、プロ野球・高校野球観戦、観光、関西学院や神戸コスモス訪問などを考えています。

 

●3年間日本の独立リーグでプレーしたシェパード氏もジンバブエ第二の都市ブラワヨに帰り、今後次第に野球の普及に尽力したいと言っています。南アのカート氏、ジンバブエ野球協会のマンディ氏、ジンバブエ・ブラワヨのシェパード氏、それにイギリスの村井さんと、層が厚くなった協力スタッフと相談しながら、新しいステップに進んだ支援をして行きたいと思っています。

 

●青山学院大学野球部へのマンディ氏の野球指導者留学は、同大野球部の今春の部員増大による宿泊スペース不足などのため受入困難となりました。継続検討致します。同野球部は昨秋東都大学野球リーグで、二部に降格されましたが、今春、二部リーグで優勝、6月の入れ替え戦を2勝1敗で突破し、見事一部に復帰されました。

 

●関学高・デサント・三菱神戸・ソフトバンクホークス・大野さん・小林氏の各位から頂戴していました野球道具を、航空便と船便に分けて、ジンバブエに発送致しましたところ、航空便は無事に届き、無税で受け取り、既に使って頂いています。船便は、半年はかかると思いますが、届けば有効に役立ててくれるはずです。

関学高は、昨夏、甲子園出場を実現され、強豪酒田南に勝ち、さよならホーマーで敗れはしましたが優勝した中京大中京と好ゲームを展開しました。三菱神戸の大川監督は、ジンバブエの元野球隊員と大学の野球部同期だったそうです。ご協力頂いた皆様に感謝しています。

 

●失業率が90%を越え、平均寿命がアフガニスタンと並んで最下位の42歳と発表された、世界有数の困難な状況下にあるジンバブエで、マンディ氏は野球協会会長として活発に行動を再開しています。写真のような自分たちで手作りした軟球を使って、昔の野球隊員たちが開発した地域などにも野球を復活させようと取り組んでいます。こんな状況だからこそ、子供たちがその時だけでも没頭できる野球が、彼らの健全な成長に役に立つと彼は言っています。楽しみです。

(5月10日公表された、世界保健機構(WHO)の世界保健統計によると、世界193カ国・地域で、平均寿命第一位は、日本とサンマリノで、83歳。ジンバブエは、アフガニスタンと並び、日本の約半分の42歳で最下位でした。)

 

●ジンバブエ国内への野球支援活動再開が見込めるようになりましたので、中断していました、皆様からの年会費(一口三千円)受付を再開させて頂くことにしました。何卒ご理解の上、ご協力の程よろしくお願い申し上げます。

 

 

<カート氏の予定日程>

8月3日南ア出発⇒4日(水)関空着

5日(木)大阪城見学・オリックス戦観戦18時~西武戦(京セラD)

6日(金)

7日(土)

8日(日) 神戸コスモス練習見学後、神戸での「夏の集い」出席

9日(月)

10日(火)

11日(水)

12日(木)関空より帰国の途へ⇒13日南ア帰着

6~11日の間に、観光、大学訪問、高校野球観戦などを検討中。

 

●ワールドカップでは随分盛り上がりました。前哨戦での戦い振りにブーイングが沸き起こっていましたが、本大会での日本チームは気持ちが違って見えました。元々世界では全く通用しない選手ばかりではないのだから、精神面が整えられたら、勝負にならないはずはないわけです。本大会までに監督も考え、選手間でもよく話し合い、良い状態に出来た賜だと思います。特にサッカーでは顕著ですが、ボールを持っていない選手がどれだけ走れるかは大きな要素になると思います。「例え今回無駄走りになったとしても私は全く構わない。完璧にやるよ。」という気持ちになって愚直に取り組めるかです。代表選手ですから、みんな分かっているのですが、実際にはどこまでそれが出来るか、無駄走りを自分が誇りに思えるか、互いに尊敬出来るか、そこには繊細なものが絡んできます。私が高校野球の指導をしていて感じることも同じです。無駄になっても良いと、凡ゴロでも全力で走ることが、チーム内で尊敬される雰囲気が大切です。人生でも社会でも自分が気付いた小さな事に取り組めることから、何事も始まるのではと感じています。

 野球も、ひとつのストーリーです。どの時点を取ってみてもやるべきことは等しくありますが、それをしても結果に結びつくという保証はありません。保証はなくてもすべき事をやり通す姿に美しさを感じています。