事務局だより

伊藤益朗

 

<お断り> 今回の16号編集時点ではシェパード選手はまだ本契約をしていませんが、契約して日本でプレーすることを前提に編集させて頂きましたこと、ご了承ください。

●シェパード選手が合格した2005年10月の四国リーグトライアウトご報告

192センチのしなやかな体が異彩を放っていました。充分な相手や環境に恵まれていないジンバブエで身につけたシェパードのプレーは、始めは興味本位で見られてもいましたが、途中からは尊敬と共に認められていました。本当に嬉しい光景でした。日本人指導者が居なくなったジンバブエ野球ソフト界の新たなムーブメントになり、彼が先駆者でしかも将来の指導者になってくれたらと思っています。

トライアウト一日目の朝に元隊員の根岸勇二君がさいたま市から来てくれたので、通訳として彼をグランド内のシェパードの横に付けさせてくれるようリーグにお願いし、了承を得たので、情報面でのハンディが少なくなって助かりました。

初日の50m走、キリンのように途中からどんどんスピードを上げ、確か6.31秒だったかと思います。遠投テストは94m、シートノックでは反時計回りの2塁送球時のキャッチングが不正確でジャッグルをしていましたが、フォースプレーは誰よりも上手に見えました。

二日目は各人10本のフリーバッティング。その後、選手を半分くらいに絞ってのシートバッティング2打席。ショート左の内野安打と次の打席は、四国リーグでも速球派の投手からインコースぎりぎりを空振り三振。スイングが良く振れていた為か、石毛代表から、最後にもう一度打つように言われ、同じ投手から見事な三遊間ヒットを打っていました。呼ばれたのが3名、ティー打撃を見てもう一度打てといわれたのがその中の2名。トータルで3打数2安打。この日の最後に、石毛氏の前で5~6名の選手がノックを命ぜられ、その中にも入っておりました。

日本の選手たちは様々な球種を打って来ているためか、スイングがぎすぎすしており、その点、シェパードは余りややこしい球種に普段悩まされていないせいか、スイングが伸びやかで、美しい打球が飛んでいました。空振りした時も実に美しい自分のスイングをしていました。

石毛氏がグランド内で根岸君とすれ違う時、「シェパードは魅力がある」と言われたのも頷けると思いました。彼としては本当に良くやったと私は感じました。11月のトライアウト第2弾にハイレベルの選手が多く来たとしても、シェパードが合格する可能性は充分にあると感じました。

以上、今回のトライアウトに関してですが、ジンバブエというある意味で孤立?した環境の中で、このようなセンスある選手が育ったことに、本人の精進とともに、村井さんをはじめ歴代協力隊員の皆さんの力を感じました。実際、合格したことを電話で報告した時、村井さんは「やっぱり永くやり続けたからこそ出来たことですね」と殊のほか感無量の様子でした。10年以上、いくら好きとはいえ、かのジンバブエで野球を伝え続ける中では辛く、孤独な時もあったことでしょう。シェパードのみならず、村井さんをも応援できたようで、今回のことは本当に良かったと感じました。また、シェパードはただ上手というだけでなく、日本人に指導してもらっていたために、日本風の野球に違和感なくついていける所も今回については大きかったと感じました。そして彼は合格後も、来る気満々、何の迷いもないようでした。

10月26日は正岡康子さんがショッピングと回転すしに連れて行ってくださり、8皿食べたそうです。27日は武庫川女子大の森文彦さんが女子大構内案内や神戸観光のあと泊めて下さいました。

28日朝、迎えに行った帰りの車内で、私は彼に「キャッチボールをしないか」と誘いました。快諾してくれ、数十分間快い汗を流しました。映画「フィールド・オブ・ドリームス」のラストシーンのようです。遠くに暮らす彼らとは今回別れるとこの世で2度と会えないかも知れないという気持が私にはあります。ナイジェリアで最後だったかもしれないところが、一昨年の関学の招待で再会、そして今回のトライアウトと奇跡的に再会が実現しています。その人を心に刻んでおくのに私が使う方法がキャッチボールです。人柄、呼吸、ぬくもりが確かに私の心に留まるのです。そのあと、シェパードは関学大の松岡マネージャーとUSJに。

他にも高松での大橋登さんはじめ皆さんに温かくして頂き、29日に無事、帰路につく予定でしたが、関空から引き返してくることになりました。その件は正岡康子さんの文章にある通りです。

今後の往復の航空運賃と生活費は、出来るだけシェパード本人が給料の中で工面し、日常的な援助は状況から判断した最低限にすることで検討しています。皆様からお寄せ頂いた年会費の殆どが毎年シェパードの航空運賃や生活費で消えることは望んでいませんが、それでもあくまでも状況からの判断ということでご了承頂ければ幸いです。

シェパード選手には、ジンバブエ選手、アフリカ選手の先頭を切って、道を切り開いているという、強い意志をもって、挑戦してもらいたいものですが、この新しい道が、短期の成否に関わらず実りあるものにつながりますよう、皆様に温かく見守って頂けることを願っております。

<参考>シェパード選手の収入は、月末毎に翌月の基本給(8、10、12万円の3段階)が決められ、25日に支払われます。その他に1ゲームごとに活躍した選手に与えられる報酬(最低4万円)があります。又、住居(3名同居)は希望すれば用意されます。はっきりした収入は出ませんが、厳しいことに違いはないと思います。

 

●例年、野球会の皆様にお送りしていました、ジンバブエ選手からのクリスマスカードは、今年は中止とさせて頂きました。村井氏が南アに移住されたことで実行が困難になったためです。どうぞご理解ください。

●例年12月に、ハラレドリームパークにおいて私たち野球会の支援で開催していましたドリームカップは開催しませんでした。資金の運用面などで信頼できる状況にまで達していなかったので開催を見合わせました。今後も状況を把握しながら、地に付いた支援を続けたいと願っています。ご理解の程お願い致します。

●昨年10月、あるNGOからカンボジアに野球指導に派遣された小林拓也さんと縁があり、メールアドレスの分かっている会員の皆様に野球道具の寄贈をお願いしましたところ、多数のご協力がありました。別掲の小林さんの文章と共に、ここにお礼を申し上げます。

●今回の執筆者も多彩です。小林さんのほか、シリアでソフトボールを広めようとする元ジンバブエ隊員の岩田さん、久々にジンバブエを再訪した井上さん、マラウィでの任期もあと半年となった協力隊の溝畑さん、シェパードゆかりの人々、最初からの協力者岡崎さん・・・、感謝しています。

●昨年12月末までの、主な出金と入金額報告。今期首(2005.6.1)実質残高944,057円が2005年末現在1,392,318円。その間の入金は会員の皆様から送金して頂きました年会費など631,529円。支出はジンバブエの風15号印刷費51,450円と、シェパード選手来日中の諸費用131,818円です。基本的にシェパード本人及び私方が依頼した人にかかった費用のみを計上しましたが、多くの方のご好意によるところもありましたことご報告します(航空運賃はジンバブエ会計から支出)。その他の郵送費や通信費などは伊藤が立て替えています。ジンバブエからの支出は、シェパード選手航空運賃と、ハラレドリームパークで開催されましたソフトボールワールドカップアフリカ予選支援等でした。会計報告の詳細は、期末(毎年5月末)に集計し、次号でご報告いたします。

●夏の集いを2005年8月6日に開催しました。ジンバブエ野球隊員から帰国直後の坂本隆氏と元ジンバブエ隊員でアルゼンチン日系ボランティアを終えられた今岡伸宇氏の貴重な体験から興味深いお話を伺いました。岡崎氏にその報告原稿を依頼しましたが、永年の野球会への思いに力が入り、集いの記事を入れることが出来なかったようです。ご容赦願います。

 

<寄せられたメッセージの中から>

★シェパード選手の入団テストの合格、嬉しく思います。日本での生活に慣れて、実力を磨くと共に、日本とジンバブエとの架け橋にもなってほしいですね。T.A.

★シェパード合格おめでとうございます。夢のような話です。ジンバブエの子供にとっては、夢が広がる話だと思います。これを機にジンバブエの野球ソフトボールの益々の発展を祈っております。N.S.

★Great to hear from you. I am happy to hear the good news about Shepherd. I hope his time in Japan will be very profitable. F.S.

★I was very happy to hear about Shepherd , it's very good news , I hope things can work out fine , and he can reach the top , I am very happy for him , and I am sure all the other guys will be when they hear this. L.S.

★イヤー凄いですね!おめでとうございます。素晴らしい。アフリカの黒人 初の職業野球選手になるのでしょうか? 是非、応援します! 感謝  N.T.

2006年北京ソフトボール世界大会アフリカ予選・ジンバブエハラレドリームパークで開催

 

当初、参加表明した国は7カ国(南ア、ボツワナ、ナミビア、ザンビア、レソト、ケニア、ジンバブエ)であったが、実際に参加したのは、南ア、ボツワナ、ケニア、ジンバブエの4カ国。(ケニアは青年海外協力隊ソフトボール隊員がコーチとして参加) 結果は、1位南ア、2位ボツワナ、3位ジンバブエ、4位ケニアで、上位2チームが世界大会参加権利獲得し、ジンバブエは世界大会への出場権を獲得できませんでした。

 

 

中古スポーツ用品寄付のお願い(予定)

ジンバブエスポーツ&レクリエーション委員会(教育省直轄の委員会)を通じて、中古スポーツ用品の寄付依頼が来ています。これまで多くのスポーツ分野の隊員がジンバブエで活動を行いましたが、隊員数がピークであった時期から10年が経過し、隊員が大量に持ち込んだ用具・用品が痛んできていてサッカーボールでさえ不足気味とのことです。

現在、JICAの「世界の笑顔のためにプログラム」を通じて送ることを検討しています。現地の受入体制や方法を確認した上で、きちんと届けられようであれば、実行したいと思います。今は不確実でもその折には協力できるかも知れないという方には、再度、ご連絡させていただきたいと思っていますので、予め事務局伊藤益朗までご一報の程お願い致します。

TEL06-6427-4950(自宅) TEL06-6429-1009(店)

FAX06-6429-3005(店) E-mail:zykai@hkg.odn.ne.jp

また、JICAの「世界の笑顔のためにプログラム」に関して、詳しくは下記、JICAHPをご覧下さい。

http://www.jica.go.jp/partner/smile/index.html