学期を終えて

在ジンバブエ青年海外協力隊員 飛山 茂人

 

 私は今年の7月に、海外協力隊の野球隊員としてここジンバブエに派遣されました。私の担当している地域はMIDLANDと呼ばれる地域です。ここは私の前任にあたります7年度1次隊の木戸孝太郎隊員が開拓してくださった所です。首都ハラレ、第2の都市ブラワヨに比べ、私の担当している地域は、野球のレベル、野球への関心共に数段劣っていると言わざるを得ません。野球が入ったこと自体、ずいぶん遅れていたので仕方ないのですが、時にハラレやブラワヨの環境をうらやましく思うこともあります(もちろんそれが最終目標では決してありませんが)。

さて、今学期の私の巡回先は教育大学2校、中・高5校、小学校18校の計25校でした。この数字は私が先生方と話し合い、毎週行くことを約束した学校の数です。実際には全く練習できなかった高校が2つもありました。今学期は大きな試験のある学期で、生徒たちが忙しかったことも一因と思われますが、はじめの頃は学校に時間どおりに着いたにもかかわらず誰もいないグランドを見る度にがっかりしたものでした。けれども来学期にはまたトーナメントも開かれるので、そのようなこともなくなることと思います。これだけ沢山の学校を巡回していると、学校毎の特徴が見えてきて、とてもおもしろいです。たとえば男女の仲が妙に良い所もあれば、「絶対にバラバラがいい。」と言ってくる所もあり、またグローブを使いたがらない学校(捕りにくく感じているのでしょうか)があるかと思えば、グローブの取り合いっこをして毎週私におこられている学校もあります...。また英語のレベルにも学年間、地域間、で差が出ます。特に田舎の村へ行けば行く程、英語が話せない生徒が沢山います。そんな所ではコーチと生徒両方共カタコトの英語でしゃべっています。時々覚えたての現地語を交えてやると、生徒たちはとても喜びます。私も生徒や通りすがりの子供たちに名前を聞かれた時に、「オレの名前は師匠だ。」とでたらめ言ったりして遊んでいます。道を歩いているだけで、あちこちから「シショー!シショー!」と声を掛けられるのは、とても気分がいいものです。

 もちろん遊んでばかりではありません。今学期の巡回指導の中で私が最も力を注いで教えたことは、バッティングでもフィールディングでもなく、“マナー”についてです。今彼らが使っている道具のほとんど全てが、諸先輩方の友人・知人の方々が日本から寄付していただいたものです。けれども彼らは道具を大切にしようという気持ちがあまりありません。よく見かけるのが、グローブを放る姿です。私は練習の始めに「グローブを放っちゃだめだよ。これは僕たちのルールだからね。」と言っています。それでもグランドのあちこちでグローブが飛び交います。時に私は練習を中断して長々と説教をします。「これは誰の道具だ。ひもが切れたら誰が直すんだ。おまえが新しいのを作ることができるのか...。」といった具合です。下手をするとこのことは異文化の押し付けになってしまいかねません。けれども私は道具を大切にできなければ、決していい選手にはなれないと思うのです。これはとても時間のかかることでしょうが、何とか彼らにわかって欲しい所です。他にも順番をごまかす子がいたり、「チャンスは一人一回だよ。」と言っているのに二回打とうとする子がいたり...。教育大学の授業でさえもそういった生徒を見受けます。一回でも多く打ちたい気持ちはわかるんですが。

 今学期の私の仕事はこのようなものでした。始まる前は不安でいっぱいでしたが、今はとてもやりがいを感じています。時に体力的につらい日や、精神的にどうしようもない程落ち込む日もありました。そんな時いつも励ましてくれたのが子どもたちの笑顔でした。楽しんでいる時の彼らは本当にいい顔をしています。猿のようにはしゃぎ回るのは考え物ですが...。これからも私の育った文化、彼らの育った文化、それぞれの良い所を交流しつつ、彼らの夢が現実のものとなる様、がんばります。

(編集者注:1998年末に書いてもらったものです)。