岩崎先生お元気ですか?

村井洋介

 

 先日、富山の友人がコーチを務める少年野球チームで久しぶりに子供達の野球の練習に参加するとても楽しい機会がありました。一方で野球のコーチをしていたことがもの凄く遠い昔の事のように感じていて、いったい自分はアフリカではどうやってコーチをしていたのだろうか…と半ば戸惑いながらの練習スタートでしたが、ジンバブエを思い出しながらアフリカでの練習同様に子供達が野球を「楽しい」と思い「そういうことだったんだ」と自分がやっていることをキチンと理解できる練習をする事を心掛けました。

 先ずは選手各々に眼の動きからはじまり手足や身体の動きと、その動かし方を確認してもらう。そして選手がそれをやるかやらないかは別として、コーチとして思う基本的な投打の理論を説明する。次に今度は野球の試合における各ポジションの全体としての動きを一つずつ確認してから練習に入りました。いつものウォーミングアップをしてキャッチボールをしてトスバッティングで…という練習の順番ではないことに子供達は違和感を感じているようにも見えました。

 はじめに行ったのは守備練習でした。練習はフィールドにいる9人全員が自分のところ以外にボールが行った場合でもカバー等の試合を想定した自分がするべき動きを一斉にするものです。ボールの数に限りがあるアフリカではよく行なっていた練習で、当然ながら通常の守備練習(ノック)よりも時間は掛かりますし、選手一人あたりのボールの処理という観点での練習量は大幅に減ってしまいますが、「考える」そして「身体を動かす」事で、全体の動きがそれなりに解ってもらえたと感じました。

 アフリカでの練習と比較すると、日本では子供達が普段野球を「見る」機会が多いことが、練習が意図することを理解するのを助けてくれている大きな要因と改めて感じました…もちろんのことその練習の間、私がずっとアフリカ での練習を 思い出していた事を子供達は知りません…というか私がアフリカに居たことも知りません…そして、岩崎先生は今どんなことをされているのであろうと思いを馳せました。

 思いを馳せるとグラウンドの色がアフリカにいた時のようなセピア掛かった眩しさに変わり、風もアフリカっぽく吹いているように感じてきます。私はアフリカを思うとき、街や動物などよりも名前も知らない雑草が揺れる景色を一番に思い出します。それだけ野球の練習場にいた時間が長かったのだと思います。

 タンザニア…現在は、沿岸部のインド洋全域に天然ガスやオイルなどの資源が見つかり、国は私がアフリカに居た頃よりもずっと経済的には豊かになっているのであろうと思いますが、私の居た頃のタンザニアは東アフリカの中でも貧しい国で、貧しいがゆえに泥棒もいないなんて言われていた国でした。

 また商都ダルエスサラームは海抜数メートルですから、海抜1000メートルを大きく超えるジンバブエの都市に比べスポーツをする環境は厳しいと思います。なんとなく同じアフリカでも太陽が熱かった…赤道に近いからでしょう…岩崎先生はお元気でしょうか?野球以外でのご苦労でお疲れではないでしょうか?安全にお過ごしでしょうか?

 先般、英国のロンドンでまたテロが起きました。場所は私が英国在住中に約5年間通い続けたテムズ川に架かるあの「ロンドン橋」でした。唄では有名な橋ですが、お隣にあるロンドンを象徴する跳ね橋「タワーブリッジ」とは違い、橋としては特に何の変哲もありません。しかし、橋はロンドンの金融街に繋がる場所柄、大変多くの人々がこの橋を使います。そして私もその一人でした。そしてナイフを持ったテロリスト達が人々に襲い掛かった橋の袂にあるバラマーケットは週に一度は昼食に訪れたところ、思い出の場所であの様な惨劇が起きたことはとても妙な気分になります。

岩崎先生、慣れた頃が一番危ないです…タンザニアはイスラム系の人口が多い国です。イスラムの人が皆悪い訳ではありませんが、悪いイスラム系の人が潜伏しやすい環境であるのも事実です。どうか、細心の注意で野球の普及活動を大成功させてください。心から応援致しております。