<陽性者で(サッカー)チーム 自尊心育む>

 

 エイズへの偏見や差別を取り除き、感染者に自尊心を取り戻してもらおうと、HIV陽性の女性を集めたサッカーチームも活動している。ハラレ郊外のチーム「ウタノ女性コンドームケア」はその一つ。女性患者の一人が声をあげて2006年に発足した。メンバーは21~42歳の20人。週1回、2時間ほど練習する。トラップミスをしたり、大きく蹴りすぎたりするたびに笑い声が響き渡る。和気あいあいとした雰囲気だ。

 チナムさん(39)は04年に妊娠した際に検査で陽性と知らされたが、だれにも言えないまま1年間を過ごした。決意して夫に打ち明け、チームに参加した。「最初はエイズですぐに死ぬと思って怖かったし、自分を恥ずかしく感じた。でもサッカーで変わった。今は自由を感じている」

 ニャムノコラさん(41)は1男3女の母親。03年に陽性と判明した。「夫に離婚され、家の戸を閉めて孤独に泣くだけだった。今は前向きに生きている。自分たちの活動で、たとえ陽性でも何年も生きられることが社会に分かってもらえると思う」と話す。

 感染した女性たちは貧しい地域の人が多く、資金集めに苦労している。裸足でプレーする選手も目立つ。それでもHIV陽性の女性サッカーチームはハラレだけで17もあり、年に1度、彼女たちのチーム同士で大会が開かれているという。

 マルンギサ監督(46)は「チームの発足当初は偏見もあって難しかったが、今は理解が広がっている。適切な治療を受ければエイズ患者もサッカーができることを示し、早期の検査受診につなげたい」と語る。

 

●2013.11.28「パンクしないサッカーボール」柴田真宏@ヨハネスブルグ(南ア)<要約>

耐久性の高い「パンクしないサッカーボール」が途上国を中心に広がっている。すでに160カ国以上のスラム街や難民キャンプなどで、60万個が使われているという。

 南アフリカ・ヨハネスブルクのある小学校の校庭。周りはトタンやベニヤ板で造られた家が集まる。裸足やサンダルでプレーする子も目立つ。

 彼らが使っている「パンクしない」ボールは、米国のベンチャー企業「ワンワールドフットボールプロジェクト」が作った。合成樹脂で耐久性が高く、有刺鉄線でもナイフでもパンクしない。ボール内と外の空気圧が等しく、ふたのような部分から空気が出入りするから空気入れも必要ない。

サッカーNGOのテンバ・チャウケさんは「毎年50個のボールを購入してきたが、ほとんどが数カ月で壊れていた。だけど2月にもらったこのボールはすべて残っている。仕様が違うので試合には使えないが、子供たちが遊ぶには十分だ」と話す。ボールはやや軟らかく、弾む。10歳の女の子、チャヤバ・ルシャバさんは「いつも裸足でけっているけど、痛くないよ。将来は女子サッカーの代表選手になりたい」と語った。難民キャンプの子供たちがポリ袋を丸めたボールで遊ぶニュース映像を見て創業者の米国人が思いつき、2010年に開発した。ミュージシャンのスティングが趣旨に賛同して出資。「ワンワールド」は彼の曲から名付けられた。1個39・5米ドル(約4千円)で、一つ購入すると自動的にもう1個がNGO団体などに寄付される仕組みだ。同社のサンドラ・クレスさんは「自分たちのような団体はビジネスを通じて社会貢献する『ソーシャルベンチャー』と呼ばれている。ボールを販売することで持続性のある援助活動ができる」と説明する。