「音気球」のコンサートを聞いて

堤由紀子

 

私自身、ジンバブエから帰国してもう既に5年がたちました。それなりにおばちゃんになり、特に何をするわけではなくのんびりと毎日を過ごしていますが、気がつけばあたりは暗くなり一日がとても早いです。今となっては、本当に自分がアフリカにいたのかなぁ?と思うくらい遠い昔の話のようです。

 

しかし、そんな私が最近ジンバブエを懐かしく思い出していました。実は数日間、うちのテレビが壊れていました。普段何気なしにつけっぱなしになっているテレビ。ジンバブエにいた頃は部屋にテレビがなかったので、この「テレビなし時間」がその当時を思い出させていたのです。

 

「つけっぱなしテレビ」がないと、ついでにトラ(息子:尚虎(たかとら)1才)の「わるさ防止」の為にステレオのコンセントも抜いてあるのでラジオもCDもないと、時間の経つのがとても長く感じます。1日24時間というのは増えも減りもしないのに、ちょっとしたことでこんなにも感じ方がちがうのかと実感しました。聞こえてくるのは「わあわあ・・ばあばあばあ・・・」というトラの声と彼に話しかける私の声。それに、いつもなら気にもとめない生活音だけです。必然的にトラとの会話時間は長くなります。「モノがなくても心はゆたか」というのは、こういうふとしたところから出来上がってゆくんだなぁと思いました。

 

皆さんも一度試してみてください。テレビの電源を入れることなく一日を過ごす。集中してものごとを考える時間が出来ます。それに、家族の会話もきっと増えることでしょう。

 

さて、久しぶりに交流会に参加して、「音気球」のコンサートを聴きました。

 

私がジンバブエにいた時、音楽隊員が中心となり隊員有志で実施していた「キャラバンコンサート」というのがありました。学校の体育館などを借りて、歌を歌ったり、楽器を紹介したり、みんなが参加できるゲームのようなモノをしたりするのです。私も何度か参加しました。私は、ハラレのど真ん中「クィーンエリザベススクール」という、まるで豪華客船のような名前の学校で、体育隊員として活動していました。体育だけでなく音楽という別の分野で、また、学校隊員である私にとっては自分の学校の先生や生徒達以外の人達とふれあう良い機会でした。そのキャラバンコンサートで歌った曲が何曲かあったので、とても懐かしく聴いていました。

 

音楽というのはスポーツと同じで、言葉が通じなくても分かり合えるコミュニケーション手段の1つです。人間にとってとても大事なものです。ある音楽隊員が言ってました。「この世の中から音楽がなくなれば人間は狂ってしまう」と。私たちは赤ちゃんの頃から父親や母親の歌う「子守歌」を聴きながら眠ります。そうやって、無意識のうちに音楽を自分の中に取り入れているのだと思います。だから、すばらしい音楽を聴いて涙を流すほど感動したり、嫌いな音楽を聴くとイライラするのではないでしょうか。

 

ジンバブエの母国語であるショナ語の歌を歌うアカペラグループは、日本広しといえども他に数はないでしょうから、自分たちの経験してきた事を音楽という伝達ツールで表現している「音気球」の皆さんにはこれからもがんばって欲しいと思います。

 

決してジンバブエに対する想いが無くなってしまったのではありませんが、日常生活の中で「ジンバブエ」が時間と共に薄れゆく私にとって、たまに届く現地の友達からの手紙と同じく、この野球会が「ジンバブエ」を思い出させてくれます。正直、野球にはあまり詳しくありませんが、ジンバブエと少しでも関わった人間として、「急がず焦らずゆっくりと。」という言葉どおり、息長く途絶えることなくジンバブエ野球の発展に少しでも協力できればと思います。

 

福岡に来て交流会に参加する事もめっきり少なくなりましたが、機会があればまた皆さんにお会いできることを楽しみにしております。