マラウイの向かい風Ⅱ

青年海外協力隊(マラウィ滞在) 溝畑智子

 

マラウイの向かい風を受けながら、ここアフリカに来てもうすぐ1年になる。まだまだ自分達が新隊員と思っていたら、もう季節は一周し、また寒い乾期を迎えている。特に朝晩は冷え込み、息が白く見え、毛布や上着が必要である。

Townから離れ、山に囲まれ何にもない私の任地、トタン屋根のレンガ造りの我が家にも何にもないけれど、やっぱり住めば都、自分の家が一番!ハウスキーパーを雇っていないので、掃除、洗濯、食事の準備等すべて自分で行っている。朝は6時に起き、まず火おこしから1日が始まる。最近は、薪ではなく炭を使っていることが多い。病院は、7時半からなのだが、そんなに早く行ってもスタッフは誰もいない。これがアフリカ時間なのである。赴任当初は、研修の為にカウンターパートが居らず、バイクもなかった。またなかなかコミュニケーションが取れず、ただ何となく毎日が過ぎていた。村に行かない日は、主に外来でMedical Assistant(以下M.A)と共に働いていた。マラウイのこと、医療のこと、生活の事など色々な話をしたり、相談したり、毎日それなりに楽しく過ごしていた。夜は、自分の時間として過ごしているが、なぜかやることがいっぱい。もう少し、のんびり過ごせてもいいはずなのだが…。

 

 マラウイでは、政府系の病院では薬がフリーなので、毎日たくさんの患者がやってくる。マラリア、呼吸器疾患(咳をしている)、結膜炎、皮膚疾患、STI(Sexually Transmitted Infection)などの疾患患者が多い。また下痢を訴えてくる患者も多い。通常Health Centreでは、マラリアの検査ですら出来ない為、患者の症状から疾患を診断し、薬が渡されている。中には、ただ薬が欲しい為に、症状だけを訴えて毎月のように来る患者もいる。特に、1,2月頃は、農作物が収穫出来る前なので栄養不足になり やすく、また雨期で水は濁っており、暑いので蚊も多く1年で一番患者数が多い時期である。人々は、病気になれば、薬を貰えばいいと思っている人が多く、予防の重要性をあまり理解していません。なので、それを教えないといけないのだが、難しく、苦戦しながら日々活動している今日この頃である。

 

 村へは、乳幼児検診、栄養指導、マーケットや住居調査、ミーティングなどの為にバイクで行っている。一般住民は現地語しか理解出来ない人が多いので、まだまだ現地語が不十分な私は、なかなか自分の意見を言ったり、直接指導することが出来ないが、スタッフと共に少しずつ行っている。しかし、乳幼児検診では、いつも多くの人が集まり(毎回100人以上)ごった返しており、なかなかスムーズに行えない。スタッフも、きちんと予防接種が実施出来ていないことが多く、スタッフの指導も必要。栄養指導は、ドネーションの食物がないからと今は、殆ど行えていないのが現状である。マーケットや住居調査は、新鮮なものが売られているか、各家のトイレや浴室、ゴミ捨て場の有無、排水状況など、各家を訪問してチェックし、その場で指導しているが、その後のフォローがなかなか出来ず、継続性がない。などなど、問題もたくさん出てきている。唯一、今行っていて少しずつ効果が出てきていること、それはHealth Passport(日本で言うお薬の手帳や血圧手帳みたいなもの)を販売していることである。このHealth Passportは2002年頃からマラウイに導入されたシステムで、マラウイには通常カルテがないので、このノートに全て書かれており、各自で管理している。受診する病院が変わっても、過去の情報を共有することが出来、また女性用であれば、家族計画や妊産婦検診表が、子供用であれば、予防接種表や体重表のページがあり、一目で状況を知ることが出来る。しかし、お金に関することなので、スタッフがきちんと販売・管理が出来ず、私が赴任する前はHealth Centreで販売していなかった。私が行うことによって、今では多くの人が買うことが出来、外来・妊産婦検診・乳幼児検診でも、以前より少し効率的に行えるようになってきているように思う。

 

 今は問題が多い中、やらなければいけないことばかりで、何から手をつけていいのか分からない状況である。更に、私の事をとてもよく理解してくれていて、よく働いていたHealth Centreの責任者でもあるM.Aが研修の為に、今月末でいなくなってしまう。また、研修を終えて戻ってきていたカウンターパートも異動でいなくなる。2人とも10年以上このHealth Centreで働いていたので、いなくなるとHealth Centre自体機能するのかどうかも怪しい状況である。

 

順調に見えた私のマラウイでの活動、これからまた強い向かい風を浴びようとしている。残りの1年で、やりたいことがたくさんあるけれど、一つのチャレンジと思って出来るだけ気楽に考えて遣って行きたいと思う。また、せっかくアフリカに来ているのだから、活動だけでなく、観光地(と言ってもマラウイにはあまりないが…)を訪問したり、より多くの人との交流を深めていきたい。本当はジンバブエに行って、もう一度野球がしたいのだけれど、残念ながら任国外旅行でジンバブエには行けないので、せめてザンビアからビクトリアフォールズを見には行こうと思っている。とにかく後悔だけはしないように、残りの1年生活していきたいと思う。

 

 皆さんに、またマラウイの様子を少しでも知って頂けて嬉しく思います。有難うございます。日本も事故や災害等何かと危険な事も多く、これから暑くなりますが、お体大切にお過ごし下さい。そして、元気でまた皆さんと再会出来る日を楽しみにしています。もし、マラウイに興味のある方は、是非遊びに来て下さい。